2023年度   礼拝メッセージ
月日
聖書箇所

2024.02.11

白石剛史師    一人立つ女性(ひと)  

コリント人への手紙第二3章18節
聖書のみことば (新改訳聖書2017)  メッセージ  


「神は・・・ この世の取るに足りない者や見下されている者、すなわち無に等しい者を神は選ばれたのです。」    
コリント人への手紙第一1章27,28節 

 「一人立つ女性(ひと)    ヨシュア記2章1-24節

序.出エジプト後のイスラエルの民は40年の荒野の旅路を終え、約束の地カナンに入るべく、最初の町エリコを攻略するために二人の偵察隊を送り込んだが(2:1)、彼らの侵入はいち早くエリコ王の耳に入り、その命が狙われる(2:2)。その時、彼らを匿い助けたのが遊女ラハブであった。今回はイエス・キリストの系図に名を連ねるこの女性の人柄と信仰を見ながら、彼女を用いられる神様の愛の大きさと慈しみの深さを味わいたい。

1.エリコの町…死海のすぐ北、ヨルダン川西岸に位置するエリコは、メソポタミヤとエジプトを結ぶ交易路の要衝として、1万年前からすでに人が住んでいた痕跡を持ち、二重の城壁で守られた世界最古の要塞都市であった。

2.遊女とは…女性が法律的主体権を持たない時代と社会にあって、何らかの理由で男に頼れなくなった女性は、どうやって生きていけばいいのか。古代オリエント世界で女が一人で生き延びる道の一つが、遊女だったのではないかと思われる(聖書内では、他に助産婦、女預言者、霊媒師などが考えられる)。遊女は男を操るプロである。特に高級娼婦となると、高度な知識・語学力・話術・接遇力・臨機応変な対応力を用いて、相手の秘密を聞き出し、罠に陥れ、暗殺さえも行える。彼女らはいわば闇の上級国家公務員だったのである。

3.ラハブ…彼女も、そのような高級娼婦だったのではなかろうか。彼女の家はエリコの城壁の中に建て込まれており(2:15)、常に城外の世界の情報がメソポタミヤとエジプトを行き来する隊商を通して彼女のところに入って来ていた(2:9-10)。スパイ潜入を知ったエリコの王が、すぐに彼女に使いを送ったことや(2:3)、周辺の地理にも詳しかったこと(2:16)、親族から切り離されていないことからも(2:13, 18)、彼女が単に道端で男を待つ遊女ではなかったことが窺える。

4.ラハブの信仰…ラハブはそれまでのイスラエルの連戦連勝を知り、イスラエルの神こそ真の神だと告白する(2:11)。彼女の言葉が本当に純粋な信仰ゆえか、それともイスラエルに味方した方が有利だという計算に基づくゆえかは明らかでないが、いずれにせよ、聖書は(そして神様は)ラハブの信仰を肯定的に取り扱っているのである(ヘブル11:31、ヤコブ2:25)。

結.日本ではクリスチャン女性として、純粋・清廉・潔白というイメージが主流かもしれないが、このラハブを通して救い主を誕生させたのが神様だと聖書は語る。罪の泥沼の中を生きざるを得ない人間(特に社会的弱者であった女性)をさえ用いて、救いの希望を届けてくださる神様の愛と慈しみの深さを決して忘れたくない。