2023年度   礼拝メッセージ
月日
聖書箇所

2024.03.03

白石剛史師  主の翼の下に       

ルツ1:1〜18、ルツ2:12
聖書のみことば (新改訳聖書2017)  メッセージ  


「「主があなたのしたことに報いてくださるように。あなたがその翼の下に身を避けようとして来たイスラエルの神、主から、豊かな報いがあるように。」                  ルツ記2章12節

    主の翼の下に    ルツ記1章1〜18節

今回は、マタイによるイエス・キリストの系図に登場する4人の女性のうちの一人 ルツについて、ルツ記から考えていきたい。

1.時代背景(土師の時代) ルツ記の舞台は 「さばきつかさが治めていた頃」 すなわち士師の時代である。イスラ エル全体をまとめる優れたリーダーがおらず、人々がそれぞれ自分の目に良いと見え ることを行なっていた時代だった (土師 17:6、21:25)。

2.場所的背景

1) カナンの地・ベツレヘム 物語の舞台は神による約束の地力ナン。しかもイスラエル(ヤコブ) 最愛の妻ラケル の墓があるベツレヘムに住んでいたにもかかわらず、そこに激しい飢饉が襲った。暮 らし向きの良し悪しと神の約束・導き・祝福は、短絡的に一致するわけではない。
2) モアプの地
その飢饉に際してナオミの夫エリメレクは、当時の風潮の通り、自分の目に良いと見 えるモアブの地に行く決断をしたのだった。モアブ人はその出自が不純であり(創世 19:30-38)、人身犠牲を伴う宗教を持つ (2列王3:26-27) ためにイスラエルに忌 み嫌われていた敵だったが(申命 23:2-3、民数 25:1-3)、その地を選ぶほどその飢 饉は深刻だったとも言える。エリメレクも家長として生きるために必死だったのだろ う。ナオミは女性に法的自立のない世界にあって、否応なく夫について行くしかな かった。

3. モアブでの災難 しかし、やはり敵地内での開墾・開拓は並大抵の苦労ではなかったようである。モア ブ人からの身体的・精神的ストレスゆえか、夫エリメレクが死んでしまい、二人の息 子とナオミが残される。二人の息子はモアブの嫁を娶る。何とか周囲と和解するため の策だったのだろうか。しかし、その二人の息子も死んでしまい、ナオミと二人の嫁 (ルツとオルパ)だけが残された。ナオミたちは財産権を持たない女性だけの、社会 的弱者世帯となってしまったのである。

4. ベツレヘムへの帰還 何とか生きる道を探るべく、ベツレヘムへ戻る決心をするナオミにルツはついて行く。 そして見知らぬ人の畑で落穂拾いをすることによって何とか生計を維持しようとする が、「はからずも」 そこが親戚であるボアズの畑であったことから、二人の人生は大転

5. ルツの信仰 ボアズは買い戻しの権利を持つ親戚だった。ヘブル語で「ゴーエール」 と呼ばれるこ の立場は、イザヤ書 54:5で 「贖い主」と訳される言葉であり、ボアズが後のイエス・ キリストの型として登場していることに気付かされる。ルツはそのボアズに夜這いを 仕掛ける。まさに生き延びるための必死の工作であった。倫理的な良し悪しはともか く、ボアズはその彼女の姿勢を「主の翼の下に身を避ける」行為と言い (2:12)、決し て辱めなかった。

結び。
神は信仰を持つに至る過程に良し悪しをつけるお方ではない。破天荒な人生の末に救 いに導かれる人もいれば、純粋無垢な育ちの中で信仰を持つ人もいる。いずれがより 良いということはない。救いの焦点は人間の清廉潔白さではなく、神の憐れみと恩寵 なのである。置かれた時と場所と境遇の中、必死に生きようとする人を辱めることな く、ご自身に立ち帰ることを喜んでくださる神様に感謝したい。

ルツ記1章1〜18節

1:1 さばきつかさが治めていたころ、この地に飢饉が起こった。そのため、ユダのベツレヘム出身のある人が妻と二人の息子を連れてモアブの野へ行き、そこに滞在することにした。
1:2 その人の名はエリメレク、妻の名はナオミ、二人の息子の名はマフロンとキルヨンで、ユダのベツレヘム出身のエフラテ人であった。彼らはモアブの野へ行き、そこにとどまった。
1:3 するとナオミの夫エリメレクは死に、彼女と二人の息子が後に残された。
1:4 二人の息子はモアブの女を妻に迎えた。一人の名はオルパで、もう一人の名はルツであった。彼らは約十年の間そこに住んだ。
1:5 するとマフロンとキルヨンの二人もまた死に、ナオミは二人の息子と夫に先立たれて、後に残された。
1:6 ナオミは嫁たちと連れ立って、モアブの野から帰ることにした。【主】がご自分の民を顧みて、彼らにパンを下さった、とモアブの地で聞いたからである。
1:7 彼女は二人の嫁と一緒に、今まで住んでいた場所を出て、ユダの地に戻るため帰途についた。
1:8 ナオミは二人の嫁に言った。「あなたたちは、それぞれ自分の母の家に帰りなさい。あなたたちが、亡くなった者たちと私にしてくれたように、主があなたたちに恵みを施してくださいますように。
1:9 また、主が、あなたたちがそれぞれ、新しい夫の家で安らかに暮らせるようにしてくださいますように。」そして二人に口づけしたので、彼女たちは声をあげて泣いた。
1:10 二人はナオミに言った。「私たちは、あなたの民のところへ一緒に戻ります。」
1:11 ナオミは言った。「帰りなさい、娘たち。なぜ私と一緒に行こうとするのですか。私のお腹にまだ息子たちがいて、あなたたちの夫になるとでもいうのですか。
1:12 帰りなさい、娘たちよ。さあ行きなさい。私は年をとって、もう夫は持てません。たとえ私が自分に望みがあると思い、今晩にでも夫を持って、息子たちを産んだとしても、
1:13 だからといって、あなたたちは息子たちが大きくなるまで待つというのですか。だからといって、夫を持たないままでいるというのですか。娘たちよ、それはいけません。それは、あなたたちよりも、私にとってとても辛いことです。主の御手が私に下ったのですから。」
1:14 彼女たちはまた声をあげて泣いた。オルパは姑に別れの口づけをしたが、ルツは彼女にすがりついた。
1:15 ナオミは言った。「ご覧なさい。あなたの弟嫁は、自分の民とその神々のところに帰って行きました。あなたも弟嫁の後について帰りなさい。」
1:16 ルツは言った。「お母様を捨て、別れて帰るように、仕向けないでください。お母様が行かれるところに私も行き、住まれるところに私も住みます。あなたの民は私の民、あなたの神は私の神です。
1:17 あなたが死なれるところで私も死に、そこに葬られます。もし、死によってでも、私があなたから離れるようなことがあったら、主が幾重にも私を罰してくださるように。」
1:18 ナオミは、ルツが自分と一緒に行こうと固く決心しているのを見て、もうそれ以上は言わなかった。