梗概
詩篇51篇 「私をあわれんでください」 大和昌平師
今日はダビデの悔い改めの時を取り上げたのですが、これまでは遠くにいる人として見ていたダビデの 人生が、他人事とは思えなくなってきました。
ダビデ悔改の詩が心に迫ってくるようになったのです。
王となって気が緩んだのか、パテシェパ事件を起こした時のダビデは俗っぽい男でしかありません。
これがあのダビデなのか、美しい時を書き、巧みに竪琴を弾いて歌う人なのかと疑ってしまいます。しかし、これが人間の姿なのだと聖書は語っているのです。
そして、そのダビデが結局のところ私なのだと思わされるに至りました。
これは自分の姿であり、変えようがないということです。
最近、夏目漱石『こころ』に思いを向けています。
主な登場人物は遺書を書いて死のうとしている「先生」、その遺書を渡された大学生の「私」、「先生」が若い頃同じ下宿にいた私の友人のK, 下宿のお上さんとお嬢さんくらいです。
先生は若い頃、同じ下宿に住んだ友人Kと励ましあって生きたのですが、下宿先のお嬢さんを両方が好きになってしまって関係がおかしくなる。
友人を出し抜いて、お嬢さんとの結婚を決めてしまう。その数日後、友人Kは自死してしまう。
今はそのお嬢さんを妻としている先生は、本当のことを妻に言うことができない淋しさを抱えている。
この先生になぜか引かれて近づいて交流をもった学生の私に先生は遺書を書いて送る。
私はこの作品に真面目に生きようとする日本人のいきぐるしさが表現されているように思います。
大切な人の心を傷つけ、裏切ってしまうような私を赦すことができないという苦しさです。
漱石は、これは罪というものだ、原罪だと書かれているのですが、その罪が赦される、覆われるという 聖書の世界には開けないのです。
翻ってダビデはな私を洗ってください、私の罪から御顔を隠してくださいと祈っています。
神のもとで私の惨めさを隠してください、教してくださいという折りです。
ゆるされて生きる道です。私はそれを罪人に教えますとダビデ言っているのです。
根本的に罪人なのだから、掛本的に神のあわれみにのみすがって生きよう。
いくら悔いても悔いを全うできない、ぼろぼろになった心です。
これが聖書の示す新しい生き方です。自分を赦せない人間に解放を告げる福音です。
この礼拝において私たちが共に神にささげるべきものは、神の前で崩され、砕かれた心です。
その姿をあえて神の前にささげ、上からの敵しを求める心をこそささげるべきだというのです。
自分の罪を補おうとするのではなく、神の前に露わにすることなのです。
キリスト教会の礼拝において、一つの型になった言葉が1節に置かれています。
「神よ、あわれんでください」は、やがて礼拝において神の前に出る時の合言葉のようになる。
「キリエ、エレエイソン。」 「主よ、あわれみたまえ。」
そうとしか言えない。そう言って神の前に出るしかない私たちであることの告白です。
この言葉、この心から、私たちは礼拝に入り、神の前に出るのです。
ダビデはその礼拝の心を示してくれたことを感謝して受け取りたいと思います。
「主よ、あわれんでください。」これは私たちの信仰告白そのものです。
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詩編51編1〜19節
指揮者のために。ダビデの賛歌。ダビデがバテ・シェバと通じた後、預言者ナタンが彼のもとに来たときに。
51:1 神よ私をあわれんでください。あなたの恵みにしたがって。私の背きをぬぐい去ってください。あなたの豊かなあわれみによって。
51:2 私の咎を私からすっかり洗い去り私の罪から私をきよめてください。
51:3 まことに私は自分の背きを知っています。私の罪はいつも私の目の前にあります。
51:4 私はあなたにただあなたの前に罪ある者です。私はあなたの目に悪であることを行いました。ですからあなたが宣告するときあなたは正しくさばくときあなたは清くあられます。
51:5 ご覧ください。私は咎ある者として生まれ罪ある者として母は私を身ごもりました。
51:6 確かにあなたは心のうちの真実を喜ばれます。どうか私の心の奥に知恵を教えてください。
51:7 ヒソプで私の罪を除いてください。そうすれば私はきよくなります。私を洗ってください。そうすれば私は雪よりも白くなります。
51:8 楽しみと喜びの声を聞かせてください。そうすればあなたが砕かれた骨が喜びます。
51:9 御顔を私の罪から隠し私の咎をすべてぬぐい去ってください。
51:10 神よ私にきよい心を造り揺るがない霊を私のうちに新しくしてください。
51:11 私をあなたの御前から投げ捨てずあなたの聖なる御霊を私から取り去らないでください。
51:12 あなたの救いの喜びを私に戻し仕えることを喜ぶ霊で私を支えてください。
51:13 私は背く者たちにあなたの道を教えます。罪人たちはあなたのもとに帰るでしょう。
51:14 神よ私の救いの神よ血の罪から私を救い出してください。私の舌はあなたの義を高らかに歌います。
51:15 主よ私の唇を開いてください。私の口はあなたの誉れを告げ知らせます。
51:16 まことに私が供えてもあなたはいけにえを喜ばれず全焼のささげ物を望まれません。
51:17 神へのいけにえは砕かれた霊。打たれ砕かれた心。神よあなたはそれを蔑まれません。
51:18 どうかご恩寵によりシオンにいつくしみを施しエルサレムの城壁を築き直してください。
51:19 そのときあなたは義のいけにえを焼き尽くされる全焼のささげ物を喜ばれます。そのとき雄牛があなたの祭壇に献げられます。
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